1 サーリプッタ
智恵第一の舎利弗(しゃりほつ)尊者
おしゃかさまのお弟子さまのなかで、舎利弗(しゃりほつ)尊者は智恵第一の人。
神事を司どるバラモンの家に生まれ、鷺(サーリ-)のような可愛い目をした子供(プッタ)という意味で、サーリプッタと名付けられました。
やがて、賢く聡明な青年に成長したサーリプッタは、隣町のモッガラーナ青年(あとで登場します、もくれん尊者)と引き合うように知り合い、無二の親友になります。
ある日のことです、二人して町の祭に出かけました。そこで二人は「ここで楽しく踊っている人たちも、やがてはみんな死んで骸骨になるのだ」という世のはかなさをさとり、二人して出家を決意するのです。
二人とも両親の反対を押し切って、出家者になります。
彼らの最初の師は、サンジャヤという250人の弟子を持つ教祖でした。
このサンジャヤの教えは、結論の見えない、のらりくらりとしたとらえどころのない理論でした。このサンジャヤの教えを二人は七日で理解してしまい、教団のリーダーとなります。
そんな優れた二人を見て、サンジャヤは、「どうだね、二人して私の教団の後を継いでくれないか」と頼むのですが...
そんなある日、サーリプッタは道を歩く気品ある行者の姿を見かけます。彼の名前はアッサジという、おしゃかさまのお弟子さまでした。
サーリプッタは行者に近づきたいと思うのですが、たく鉢中の行者に声を掛けてはならない決まり事がありました。サーリプッタは静かに行者の後を歩き、やっとたく鉢の終えたのを見て、
「あなたのお姿を見て、美しい気品を感じたのですが、あなたのお師匠さまはどなたなのでしょうか」
と、サーリプッタは聞きます。師匠はおしゃかさま(ブッダ)だと聞くと、
「では、その方はどのような教えを説かれるのでしょうか?」
と質問します。
「私はまだブッダの教えを聞いてから日の浅い者です。すべての教えを話す事はとてもできません」
と、アッサジは言いました。
「では、要点だけでも教えていただけますでしょうか」
サーリプッタはなおも尋ねます。
「この世のすべての法には縁があって生まれます。師はその縁が生まれたりなくなることをを説くのです」
この言葉を聞いたサーリプッタは、すぐにおしゃかさまの弟子になることを決意し、親友のモッガラーナにも伝え、二人は仲間の250人と共におしゃかさまの弟子となったのです。
そうして、おしゃかさまの弟子たちの中で、サーリプッタの智恵深き事、みなに知れ渡り、その姿は静かにしておごらず、おしゃかさまの信頼あつくして、おしゃかさまの疲れた時には、いつもサーリプッタかモッガラーナに、代わりの説法を頼んだと言われます。
後年、デーバダッタ(あとで登場するダイバダッタ尊者)の企てによる教団の分裂に際しても、サーリプッタはその危機を見事に救います。おしゃかさまの右腕とも呼ばれ、教団の後を継ぐ者と言われながら、哀しい事に、おしゃかさまより先に、病のためにこの世を去ってしまいます。
サーリプッタはおしゃかさまの法を継ぐ子、智恵広くして限りなく、聡明でおしゃかさまの教えを知り抜いたお弟子さまです。