ナンダ

14 ナンダ

自制心に優れた、諸根調伏(しょこんちょうふく)第一のお弟子さま

「結婚と出家」
今日は、カピラヴァストウは目出度い日だ。ファンファーレが国中に鳴り響き、新しい王子の誕生と、結婚式を祝っていた。新しい王子の名はナンダという。スッドーダナ王を父とし、マハーパジャーパティー妃を母として生まれたナンダ王子は、ブッダにとっては異母兄弟となる。

ナンダはブッダによく似て容姿端麗であり、妻となるスンダリー姫は、国中で一番美しいといわれている娘だ。似合いのカップルの結婚式は微笑ましく、国の未来を良き方向へ導くかのようだった。

ブッダは郷里に里帰りしていた。実子ラーフラの出家は先の話で聞かせたとおりだが、新王子の即位式と結婚式に現われたブッダを、王と妃は不安な気持ちで見つめていたに違いない。また、若者達を次々に教団に連れていくブッダは郷里の大人達にとっては厄病神と見る者も多かった。

ナンダとスンダリーの前に歩み寄ったブッダは、祝福の言葉を述べた後、そっと、ナンダに托鉢に用いる鉄鉢を与えたのだ。これがどういう意味かは聡明なナンダには直ぐに理解出来た。その様子を見ていたスッドーダナ王は、叫んだ。「王子よ、行ってはならぬ」と。
しかし、その言葉は耳に入らず、ナンダはブッダの後を追いかけたのだ。ニグローダの林でブッダに追いついたナンダは、髪を剃り、出家をすることとなる。しかし、王の哀しみはいかばかりであっただろうか

出家はしたものの、ナンダはスンダリー姫のことが忘れられず、夢に見ては、思い返し、修行に身が入らないのだ。「スンダリー、スンダリー姫、今、お前はどうしているだろうか」そう繰り返し言う姿を見てブッダは、一案を講じた。
「ナンダよ、私と一緒に来なさい」「猿と天女」
「ナンダよ、私と一緒に来なさい」　そう言って、ブッダがナンダを連れていったのは、猿たちの住む林であった。そこに見たのは、醜い姿をした片目の雌猿が暴れている姿であった。そして、次にブッダがナンダを連れていったのは、天界であった。そこには、帝釈天につかえる五百もの美しい天女達の姿があった。

「ナンダよ、私がここに連れてきた意味がわかるだろう。この天女達に比べれば、キンダリーも、先に見せた雌猿と同じなのだよ」

「愛欲より離れる」
このブッダの言葉を聞いたナンダは愛欲への執着から離れることを決心し、修行に勤しむこととなる。そして、ブッダの説法を聞き続け阿羅漢の悟りを得て、様々な本能による欲望を鎮めることに優れた弟子として、ブッダより諸根調伏第一といわれ、崇められる者となるのであった。　　　　　　　おわり

余話
ナンダは、ブッダにたいへんよく似ていて美男子であったようです。ラーフラもそうであったと想像するのですが、先の話の作者の絵では、ちょっと、出家したくなかったのだけれど、偉大な父の影響で、という、ちょっとひねくれ者(笑)のような感じで描いてしまいました。ラーフラさんごめんなさい、とこの場を借りて謝ります。教団では、アーナンダと並んでナンダはイケメントップ２であったのだろうという話を意識して絵を描いてみました。

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