第7話 時空を超えて!

「7分しかないから、急いで話すよ!」
「インドでは時間ゆ~っくり流れますね!
朝起きてから沐浴ねー」

「えー!そこから話してたら 全然時間たりませんよー」

「うーん、しかたないねえー。
わかりました、私が教えるのやめました。」

「えー、そんなあ!」

「大丈夫、もうあと1分しかないから 友達に あなたのこと頼むね。」

「友達?なんていう人ですか?」

「彼の名前ね?」

「そうです、名前!」

「・・・忘れた。」

いや忘れたって・・・それじゃあどうやって?
と聞く間もなく、「忘れた」の一言を残して
ダルマパーラン師匠は 火が燃え尽きるように 息を引き取られました。

すぐ 先輩のお坊さん達に 知らせました。

それから三日間、インド中から お弟子さんたちが 集まり みんなそれぞれに
悲しみを堪えて お葬式が勤められました。
一月が経ち、次の長老も決まり 皆の生活も いつものリズムを取り戻した ある日、

ぼくはひとり
河岸にたたずんでいました。

夕日が 川面を照らして キラキラと 輝いています。
その景色を眺めていたら
なぜか、お師匠様は あのキラキラ輝く 光の向こう側に いってしまわれたんだ。 もう二度と お会いすることは できないんだ。と思えてきて 目から 涙が
あふれてきました
ポトポト こぼれる涙が
川面と同じ 夕日に照らされて キラキラ
輝いています。
まつげについた 涙も キラキラして 目の前が 光の束に
包まれたみたい。
ああ、このまま 光に包まれて お師匠様のいる 光の向こう側に 行けたらいいのになあ。

そう思った
瞬間でした。
目の前が 一段と強く輝き...
あまりの眩しさに クラクラして 頭の中が
真っ白になって 意識を失いました。

どれくらい 時間が経ったのでしょう...

ほっぺにぽつんと 冷たいものを 感じて 目を醒ましました。
周りは すっかり 暗くなっていて...っていうか

ここ...どこ!?

暗闇の中から突然に声が...

「ここはお前が今おるところじゃ!」
「おまえのいる所ったってどういうところなんです?」
「知らん知らんし、知った所でしょうがない。」
「 だって知らなきゃ何処へもいけないじゃないですか!」
「何処へ行くつもりじゃ?」
「どこってそう!お師匠様のお墓!」
「ダルマパーランのか?」
「ご存知なんですか?」
「当たり前じゃ彼に頼まれたからこそ、お前をここに呼んだのじゃからな。」
「え!じゃあ、あなたがお師匠様のおっしゃっていた...!?」

「なんと言うておった?」

「いや...それが実は...」

「実は?」

「お名前を忘れたと...」

「なんじゃと、忘れた!?愚か者めが!まだ名前を教えておらんのに。」

「えー!教えてなかったんですか?それじゃあ忘れても仕方ないじゃないですか。」

「お前もわかっとらんなあ。教えてもらったことを 忘れるのは しかたないことじゃ。教えてもらってもおらんのに、忘れられるはずもないじゃろう。」

「あ、そうか。お師匠様も慌てん坊だなあ。」

「で、お前はわしに何を頼むつもりじゃ?」
「何をって...仏教のことを習いたいんです。」
「仏教の何を習いたいんじゃ?」
「何を...って言われても...」
「だいたい何のために仏教を学ぼうとしておるのじゃ?」
「・・・・・。」
「しょうのない奴じゃなのぅ。では特別に融通を利かせて、三者択一にしてやろう!」


「第一 生きていくために仏教を学ぶ 第二 立派な人間になるために仏教を学ぶ 第三 つらいことや苦しみから逃れるために仏教を学ぶ さあ、どれかな?」 

「ええ!いきなり三択って言われても...」

「生きていくだけなら仏教じゃなくても生きる方法は教えてもらえるもんなあ。同い年のプリーラなんか、お父さんもお母さんも死んじゃったけど魔術師のおじさんから手品習って、それで生きていってるもんな。 第二か第三だなあ。 でも僕、立派な人間になれそうにないし・・・ じゃ、三番にするかな?」

「ピンポンピンポン正解じゃ!褒美をやらねばな。」
「え?何かくれるんですか?」

「わしの名前を教えてやろう!」
「え...それだけ?」

「それだけとはなんじゃ!おまえの師匠すら知らぬことを 知ることが出来るんじゃぞ。有り難いことじゃろ。」
「そういわれるとグーの音もでませんが・・・ で何というお名前なんですか?」

「サンタクローシじゃ。」
「え?サンタクロース?」

「そうではない!!三つの選択肢から一つを選ぶ三択老師じゃ!」

「三択老師!?」

こりゃまた ややこしそうなことになってきたなあ・・・