第3話 ご誕生~降誕~
インドの国の北端、ヒマラヤ山脈の麓に、シャーキャ族といわれる人たちが住ん
でいました。
王様の名前は浄飯王(じょうぼんおう)、お妃の名前は摩耶夫人(まやぶにん)
といいます。王様の名前に「飯」という字が使われていますね。このことからお
米作りが行われていたことが窺われます。
ある時、摩耶夫人は白い象が天から降りて、自分の胎内に入る夢をご覧になられ
ました。皆さんは動物が自分の体に入る夢をご覧になられたことはありますか?
この不思議な夢の話を妃は王にお話しになられたことでしょう。もしかしたらこ
の夢は何かが起こる兆しで、王も妃も世継ぎを期待されたかもしれません。やが
て摩耶夫人は懐妊され、ご夫婦ともに大変お慶びになられました。
摩耶夫人はシャーキャの隣国コーリヤ族の出身で、お産のために実家へお帰りに
なられます。その途中ルンビニーというところへ立ち寄られます。ここは数多く
の花に囲まれ、とても美しい土地です。
伝説によりますと、この地で摩耶夫人は沐浴の後、右手を挙げて木に咲いている
花を摘もうとされました。その時、右脇腹から出産したとされています。
ついに王子が誕生されたのです。
第4話 ご誕生
産まれてきた王子には、ガウタマ・シッダールタという名前がつけられました。ガウタマというのは、名字のようなものですので、以下、王子をシッダールタと呼びましょう。
浄飯王にとっても摩耶夫人にとっても、初めてのお子様です。ご両親はもちろんお城の中、あるいは村の人々も大きな喜びにとっても満ちあふれたことでしょう。
ところで、シッダールタが産まれた時の逸話に有名なものがあります。
彼は生後間もなく、右手を高く天を指し、左手を下に伸ばして大地を指して言いました。
「わたしは天にも地にも、もっとも尊い者である」と。
これが「天上天下唯我独尊」として伝えられています。
この言葉は「わたしが一番偉いんだ」と捉えられがちですが、この時あたかも天からは甘露の雨が降り、花々が無数に散り大地を覆い、清らかな音楽が流れ、神々や精霊たちが誕生を祝ったと語られていますので、尊い人が生まれたことを讃嘆しているとも考えられます。
今でも、お釈迦様の誕生日である4月8日には「花まつり」といって、花御堂の中に天地を指した童子姿のお釈迦様をまつり、甘茶を注いでお祝いします。
実際に赤ん坊が「天上天下唯我独尊」を唱えたが否かではなく、こうやってお釈迦様の誕生は、まつりによって伝承されてきたのです。
さて、父浄飯王にとって、シッダールタは王位を継承すべき存在ですので、大切に大切に育てられたのでした。