仏説無量寿経を全42カットの絵と文章でご紹介していきます。更新をお楽しみに!

インドの王舎城の霊鷲山(りょうじゅせん)で、お釈迦様が大勢の偉大なお弟子様とともにいた時のことです。その日のお釈迦様はいつもより光り輝き、どの仏様にも増して気高いお姿でした。

この様子を見た弟子のアーナンダがお釈迦様にその理由を聞きました。するとお釈迦様は「どうした、アーナンダよ。誰かにそう言うようにと教えられたのか?」と答えました。

アーナンダはお釈迦様に言いました。
「いえ、決してそういうわけではありません。今日のお釈迦様のお姿があまりにも素晴らしいからです。お釈迦様、今日は何かとても大切な教えをお説きになられるのではないでしょうか?」

お釈迦様は、アーナンダが今日の特別な姿に気がついたことをお褒めになり、お釈迦様が本当に説きたかった大切な教えを説きはじめられました。

はるか昔のお話です。
多くの仏様が次から次へと世に現れました。そして世自在王という名の仏様の時代、一人の国王が世自在王仏の説法を聞きました。

国王は世自在王仏の教えを聞いて大変感動し出家しました。法蔵と呼ばれ、「自ら仏となり清らかな国を建て、人々を救う」と誓って菩薩になりました。

法蔵菩薩の願いを受けて、世自在王仏は、他のさまざまな仏の国の様子を菩薩に説いて聞かせました。


世自在王仏が説いた二百十億もの仏の国々の中から、五劫という長い時をかけて、自らの国を建てるために、清らかな行いをおさめとりました。


そして、法蔵菩薩は世自在王仏の前に行き、国を建てるための清らかな行いをおさめとった事を告げて、その誓いを説き始めるのです。


その誓いは四十八にも及びました。その内容は仏と浄土と念仏に関するものであり、まず仏に関する誓いとは、自らが仏となった時には、無限の光明と無限の寿命を有し、他の全ての仏よりすぐれ、あらゆる仏からその名を称讃される仏になるというものです。 

次に浄土に関する誓いとは、自らが仏となって建立する浄土は、他のいかなる仏土よりもすぐれた覚りの世界であり、この世界に往生した者は誰しもが必ず仏道修行を完成させるというものです。

次に念仏に関する誓いとは、念仏以外の他の一切の実践行を往生のための修行とはせず、自らが建立する仏の世界に往生するための方法として、仏となった自らの名を口に称えることを選び取るというものです。

法蔵菩薩はさらに重ねて、「私は必ず素晴らしい国を建て、苦しむ者達を救い、私の名が世界を超えて響きわたり、他の優れた仏達と等しい者になる」と誓いました。

その誓いがなされた時、大地がふるえ、空から花が舞い降り、「法蔵菩薩の大いなる願いは必ず開花するであろう」と讃える声が響き渡りました。

法蔵菩薩はこの浄土を建てて衆生をお救いになるため、はかりしれない年月をかけて仏道修行に励み、やがて阿弥陀仏という名の仏となり、西の彼方、十万億仏土を過ぎたところに、永遠に清らかな国「極楽浄土」を建てられました。

阿弥陀仏の光明は、あらゆる世界を隅々まで照らし、その光明の絶大な力により、衆生はあらゆる汚れや悩み苦しみから解放され、身も心も安らぐことができます。


阿弥陀仏の寿命やその国の者達、菩薩や弟子の寿命は、はかりしることが出来ないほど永遠のものです。


七宝で出来た樹が並び、菩提樹はひときわ高く空にそびえたち輝いています。そして風に揺られた枝や葉からは、仏の教えが伝わってきます。


七宝で出来た建物のまわりには、不思議な水が満ちた池がいくつも取り囲み、岸にはとても良い香りのする樹が枝を揺らしています。


美しく穏やかに時が流れ、みな優れた智慧と不思議な力を持ち、美しい姿かたちは他の国に比べようがありません。彼の国では蓮華の光の中から無数の仏が現れ、また仏の放つ光から尊い教えが説かれ、聞く者達を安らかな道へといざないます。


彼の国に生まれる者は皆、さとりをえて仏の仲間となるでしょう。阿弥陀仏の名を聞いて彼の国に生まれたいと願うなら、すぐに迷いのない位にいたるでしょう。


彼の国に生まれたいと願う者には、大きく三つに分類されてやってこられました。

(上輩の者)出家して修行者となり善い行いを積み、命終わる時には阿弥陀仏と聖らかな者達に迎えられ、彼の国の七宝の蓮の中に生まれる者。また(中輩の者)戒律を守り善い行いを積み、命終わる時には阿弥陀仏は化身となり多くの聖者らと共に迎えに来られた者。(下輩の者)また善い行いを積む事がかなわずとも、仏の教えを聞いて喜び、わずかな数の念仏であっても心から彼の国に生まれたいと願い、命終わる時に阿弥陀仏の姿を見て生まれたものです。


東の仏の国々から限りない数の菩薩達が阿弥陀仏を拝し、供養します。そして他の九つの方向の仏の国の菩薩達も同じように阿弥陀仏を讃え供養するのです。


菩薩達はこの国を見て、自らも仏となりこのような国をつくりたいと願います。阿弥陀仏は「菩薩達が未来に仏となり、それぞれの国を建てる事を約束しよう」といわれるのです。


お釈迦様は阿難に言われました。「彼の国の菩薩達は次に生まれる時には必ず仏となる事が約束されているのです」

続いてお釈迦さまが言われました。「彼の国の菩薩達は仏の不思議な力を受けて一度の食事をする短い間に限りない数の仏の国へ往き仏達を供養します。供養の品は自然と現れ、まかれた花は(天がい)となって空をおおい、美しい音楽と歌声で仏達を讃え、そして供養を終えると、食事が終わるまでに自らの国に帰るのです。」


続けてお釈迦様は言われました。「彼の国の者達が阿弥陀仏の教えを聞く時には七宝の講堂に集まります。そして、彼の国に生まれた菩薩達は、常に正しい教えを説き、とらわれの心なくその智慧をもって世を照らす灯となるのです。」


「あなた達はこの国に生まれたいと願いつとめるのです。そうすれば必ず生まれ、さとりを得ることができます。善い行いをつむ者は善い世界に、悪い行いをつむ者を苦しみを受ける世界に生まれるのです。」


弥勒菩薩がひざまずいて言いました。「師の教えは私達が進むべき道を示して下さいました。迷いの世界を離れる決意ができました。阿弥陀仏の極楽浄土のことを聞いて喜ばない者はいません。」


お釈迦様は言われました。「あなた達が、この世界において、心を正し、悪い行いを犯さない事が重要です。なぜなら他の仏の国の者達は善い行いをすることはたやすく、悪を犯すことは殆どなく、さとりの世界に入り易いのです。」


お釈迦様が続けて言われました。「この世の者達全てが様々な罪を犯しています。

悪い行いを重ねる者は地獄や餓鬼・畜生の世界を巡り、苦しみから逃れるのは難しい。しかし、身も心も正くして善い行いを積み、悪い行いをしなければ、その行いによって人は迷いを離れ清らかな国に生まれ、さとりを得る事が出来るのです。」


この世の者達の中で、暮らしの中で戒律を守れず、邪な考えや欲望のままに生き、自分さえよければいいという考えの者、また悪い考えの人とのつき合いを重ねたり、盗みを重ねる者、そしてこの世で善い行いをなそうとせず、共に悪事を企む者や、悪口で人を蹴落としたり、自らおごり高ぶる者、父母や先生、友達を敬わず、人の善行を憎み、わが身を顧みずに仏の教えを信じない者などです。


続けてお釈迦様は弥勒菩薩に言いました。「人は悪い行いを積む事ばかりで、苦しみは終わりません。仏達はこれを哀れみ、その不思議な力をもって悪を無くし、善の方へ導きます。人々よ、仏の教えを受けとめ心を正して善をなし、周りの人々を敬い、悪の源を断じなさい。 そうすれば、必ず迷いの世界を抜け出すことができます。

人々よ、この世界で心を正し、戒律を守り、清らかな生活を続けていけば、彼の国で善行を積む事の百年に勝るのです。またこの世界において善行を積む事十日十夜すれば、他の仏の国での千年の善行に勝るのです。彼の国も他の仏の国も善行を成す者多く、悪行を成す者は少ないからです。 


この世界の人々は、仏の教えを受けて皆和やかに暮らし、日も月も清く輝き、災害も戦もなく、人は徳を積み、礼儀正しい世の中となるでしょう。 


お釈迦様は言いました。「私がこの世界の者達を想う気持ちは、父母が子を想う気持ちよりも強いのです。私が世を去った後様々な苦しみに満ちた世になるかもしれません。どうかあなた達は仏の教えの通りに道を歩んでいきなさい」弥勒菩薩はこたえました。「私は師の教えを受けて、この世界の者達を慈しみ、迷いの世界からさとりの世界へといざないます。 そして私達は必ず師の教えを失いません」


そしてこの時弥勒菩薩と阿難をはじめとする大衆達が阿弥陀仏の姿と美しい彼の国を目にするのです。


疑いの気持ちを持ったまま彼の国に生まれても宮殿の中にとどまり、五百年の間仏や菩薩達を見る事もその教えを聞く事もかないません。仏の智慧を心から信じて善い行いを積み、彼の国に生まれたいと願う者はただちに七宝の蓮の花に、自ら座り生まれているのです。


この国の者達だけでなく、他の仏の国の菩薩達をはじめ、かぎりない数の者達が彼の国に生まれるのです。


お釈迦様は、弥勒菩薩に語りました。「彼の佛の名を聞いて、喜びが満ちて、一度の念仏を称えただけであっても、その者は大きな利益を得るのです。たとえこの世界が火の海でおおわれても、ひるまずにこの教えを信じて前に進むのです。」


私は今、全ての者達にこの教えを説きました。未来の世に仏の教えが滅した時も、私は慈しみの心をもってこの経を百年とどめるでしょう。この時、師の教えを聞いた者達は皆、清らかな心を持ち、将来必ず仏となることが約束されたのです。


その時大地は震え、世界に光があふれ、妙なる音楽が聞こえ、無量の美しい花が空より舞い降りました。菩薩達、夫人や弟子達、人々は皆その教えを聞いて歓喜しました。

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